台北高等学校の徽章は「椰子の葉」か「芭蕉の葉」か。塩月善吉先生の言葉(要旨)を紹介します。(「台北高等学校から」)
「図案を作ったのは、大正十年二月ころだった。私は松山高等学校に創立当時からいたが、台北に創設される高等学校に行く事は、また可成りの興味を抱かされた。
初代校長として開設に努力中だった松村傳氏から大至急、徽章図案を考案して送るようにとの事だった。台湾を知らぬ私だが、頭に浮かんだのは芭蕉の瑞々しい豊満な広い葉と熱帯の碧空にのびのびと立ちのぼる椰子の先端の魅力とだった。
正三角形を基礎として椰子の若葉の先端を当てはめて作ったのが徽章となった次第。椰子の葉は勝利、正義、向上、理想の象徴、正三角形は平等、安定、進展。頂角は真善美、科学芸術宗教、教育道徳体育の偏せざる理想が考えられる。だが、必ずしも私の図案どおりに制作されたとは思わない」